インタビュー
インタビュー
氏名(ニックネーム) | Neo |
社名 | キングソフト株式会社 |
職業 | ソフトウェアエンジニア |
入社 | 入社 |
IT産業は開発して運用する情報システムはすべての産業に関わり、大きくは航空会社の管制システムに、小さくは銀行のATMシステムまで、IT技術は社会生活の各方面に影響を与えています。 日本でIT業界の生産額は日本のGDPの10%ぐらいを占めるまでになっています! 我らのNeo先輩は2014年に中国IT企業としては日本進出の先駆者であるKingsoftに入社します。
異なる大学経験―2+2留学がもたらした日中でのダブルの大学経験
先輩こんにちは。まず先輩の経歴をお聞きしたいのですが、先輩は中国国内の高校を卒業されましたか?
中国国内の高校を卒業した後に、国内の大学に2年間、日本の大学に2年間通いました。来日後に編入学をしています。中国では大連外国語学院の日本語専攻で、日本では城西大学(埼玉県)の社会福祉学部です。大連外国語学院の多くの同期は私と似たような状況で、まず国内でしばらく学んだあと、日本の大学に入学しています。しかし、当時一緒に日本に来た同期の中で、大学卒業後すぐに就職したのは私だけで、他は皆大学院に進んで経済を勉強しています。
中国での大学本科の2年間は語学学校に通っている感覚でしたか?
そう言って良いでしょう。2+2プログラムとでも言えるでしょうか。しかし私たちが来日して感じたのは、日本の中流大学に入ったな、というものです。あなたたちのような私費で学部受験した名門大学生とは違うでしょう(笑)。もし私たちも中国の高校卒業後、直接受験していたら、もっと良い大学に入れたと思います。そのためこの点においては満足してはいません。
先輩、褒めすぎですよ(笑)。ではなぜ先輩は大学院を選ばず就職することにしたのですか?
個人的に思うのは、もし本当に研究をしたいと思うのでなければ、大学院は時間とお金の無駄です。本科の学歴の場合、優秀な学校卒業であればその影響力はあります。しかし、大学院では優秀な学校卒業はありふれていて、本当に最高峰の学歴でなければ、実際のところ何の助けにもなりません。
2年間の日本での大学生活で、最も印象深かったこと、最も努力したことはなんでしょうか?就活ですか?
就活ではありません。最も頑張ったことは、生き残るために昼間は学校に行って、夜はアルバイトをしたことです。当時やっていたものは倉庫、工場、物流センター、コンビニ・・・など。もちろん同時にやっていたのではありません。労働時間制限を超えはしませんでしたが、夜は時給が高いので、夜にやっていました。幸運だったのは、奨学金をもらっていたことで、そうでなければ時間制限を超えて働かなければならなかったでしょう。
アルバイトや就活、授業にも出席して、先輩の就活時期は大変だったのではないですか?
その時期にはもう授業はありませんでしたが、論文のプレッシャーがありました。もし就活が順調に進まなければ、論文執筆も遅れます。そのため、私は内定をもらったらすぐ論文に取り掛かりました。
本当にお疲れ様です。では日本で勉強した2年間で、城西大学の比較的満足したところは何でしたか?
留学生への配慮が良かったです。優遇政策が比較的多いですし、一番は経済方面でのサポートです。奨学金や学費の減免があり、寮もありました。
学校の就職支援はどうでしたか?
就職支援は普通です。就職課に行くと先生がサポートしてくれます。情報提供がメインですが、直接企業紹介もしてくれます。しかし、日本人の学生向けです。また、紹介してくださったのはどれも現地の小規模企業でした。
就職準備―自分の「就職力」を磨く
先輩は城西大学に2年間の在学で、入学したときは大学3年生ですよね。就活は大学3年の後期からすぐ始まったのではないですか。
いいえ、私は2011年9月入学、2013年9月卒業です。ですが、2014年度の卒業生だと見なされるので、他の人より半年多く在学しています。当時困ったのは、卒業前に内定を得る必要があるけれど、卒業前に決まっても入社するのは2014年ということでした。
そのような状況で、企業側に何か問題はありませんでしたか?これは特殊な例ですよね。
企業に説明はする必要はありますが、特に問題はありませんでした。大きめの企業であれば、9月に入社できる制度をもっている場合もあります。
就活プロセスにおいて、先輩が最も重要だと思う「就活力」はなんですか?
日本語です。エントリーシートを書き、SPIテストを受け、ディスカッションに参加するなど、どの場面でも日本語能力がとても重要になります。例を挙げましょう。私は一昨年9月から就活の準備を始め、12月にエントリーシートを提出し始めましたが、12月の時点では日本語レベルはあまり良くなく、みんなと同じようなありきたりなものしか書けませんでした。このような状況でしたので、就活はうまく進みませんでした。
つまり、普通の学校に通う一般的な日本語レベルの学生には、仕事が見つけられないということですか?
そう思います。絶対に日本語力を強化する必要があります。強化し始めればあとは簡単に行くと思います。強い決心を持って2、3か月猛勉強すれば、必ず強化できますよ。
先輩の突破方法を教えていただけませんか?
ラジオです。目でものをみると注意力が散漫になってしまうのでテレビは見ず、ラジオを聞きます。ラジオを聞くときはシャドーイングをし、ラジオで言ったことを続いて復唱します。もし放送内容がインタビューだったら、2人の会話全てをシャドーイングします。ニュースであれば、その内容をシャドーイングし、天気予報だったらそれをシャドーイングします。歌が流れたら、それに合わせて歌います。始めたばかりの時は追いつかないでしょうが、しばらくするとだんだん追いつくようになって、ラジオで流れることをすぐ言えるレベルになるでしょう。
では先輩の現在の日本語レベルはアナウンサーレベルになっているのではないですか?
仕事を見つけられるレベルになったばかりですよ。
もし聞き取れない言葉があったときはどうするのですか?
その時は仕方がないですね、聞き流します。しかし、わからないこともいつかわかるようになります。つまり、はっきり聞き取れない単語も繰り返し何度も聞いているとだんだん発音がわかるようになり、そうすればそれがどんな意味か調べられるでしょう。
日本語能力はいろんな要素があり、例えば発音や敬語の用法などがあります。中国人にとって一番苦手なものは何でしょうか?
まず、敬語は気にしなくて良いと思います。最も重要なのはあなたが他の人の話を聞き取れ、相手もあなたの話を理解できることです。そして日本語らしい日本語を話し、違和感を感じさせないようにすることです。
日本人は往々にして曖昧なことが多く、話の中に言外の意味が入っていることがあります。イエスと言った時の本当の意味はノーで、ノーと言った時に実はイエスという意味を表現している時などです。
私は、これはあまり深刻な問題ではないと思います。一般的に就職宣伝の文句は曖昧ですが、宣伝文句は元々曖昧なものであり、全く問題はありません。企業の視点から見れば、欲しいのは今後企業において役立つ人であり、そう考えれば多くのことはすぐ理解できます。企業は、あなたがきれいに話すことを期待していません。落とすためではなく選抜するために選考を行っているのです。
就職活動―一歩ずつ模索し前進していく
当時エントリーシートを提出した企業はKingsoftなどの中国企業以外に、他にもありましたか?
就活が始まると同時に、百円ショップを含めいろいろな企業に提出しました。私の就活はけっこう適当でした。
では現在の会社には満足ですか?
満足と言えば満足ですが、当時もし就活を続けていたら、もっと良いところを見つけられたかもしれません。
Kingsoftから内定を得た後はもう就活は続けなかったのですか?
続けませんでした。Kingsoftは私の三つ目の内定先でした。それまでに受かった一社は、NEC専門にシステムを提供している会社で、100人規模の小さな会社でした。もう一社は大阪のECサイトの会社で、主に腕時計をネット販売しています。この会社は香港などに向けて腕時計を販売しており、私の職種は国際業務でした。
エントリーしたのは全てIT企業でしたか?
内定をもらったのは全てIT企業でした。しかし、以前は自分のやりたいことがわからなかったので、その他にもいろんな業界にエントリーしました。
では先輩は内定を得た3企業はIT企業ですが、総合職にエントリーしましたか?
いいえ、NECは技術職でした。
つまり文系でも技術職に応募できるのですね?
はい、可能です。システムエンジニアといった職種であれば全く問題ありません。というのも、この仕事はそれぞれの企業で使うものが全く異なっているため、入社後に学びます。それまで勉強したものは直接使いません。
先輩は先ほど、日本語能力について強調されていました。しかしどんなにレベルを上げても日本人には及ばないと思います。外国人として、就活の時にどのように差別化を図りましたか?また、どんなところに有利な点がありましたか?
まずひとつ残念な現状をお話ししなければなりませんが、日本語レベルを極力日本人に近づけないと、仕事は見つけられません。これが最大の問題です。そして他の能力は付加価値として加算されます。つまりは自分の経歴のことで、例えば私の場合、当時は余暇にカメラなどを設計していました。最終面接でこういった成果を相手に見せますが、もし相手が見せてくれと言わなくても機会を探して見せます。相手に見せることができれば、うまくいったということができるでしょう。
つまり、個人の能力や経歴によって加算はされるけれど、何といっても日本語能力が日本人に近いことがボーダーラインということですね。
そうです。私は中国企業に入社しましたが、人事部は日本人が管理しています。
では留学生として有利な点を感じたことはありましたか?
私の会社は結局のところ中国企業で中国関連の業務があり、中国の商品部門と協力するために、中国語が必要です。他の企業が相手であれば、もし相手が中小企業の場合、私はこう言うでしょう。「御社は現在日本国内でしか活動していませんが、今後海外に進出する可能性があるでしょう。」
はっきりこのように言ってしまって良いのですか?独りよがりに捉えられてしまいませんか。
こう言ってしまって構いません。「御社がいつか海外進出することになったとき、もし海外と関わったことがある人がいなければ、どうやって活動するのでしょう。高い給料で外部から中途採用で雇うより、他の社員と同じように外国人を雇い、会社で教育したほう良いと思います。外国人社員は御社のことしかわかりませんから、雑念を持つこともないでしょう。」
初めからずっとこのような考えを持っていたのですか?これは先輩が自ら考えたものですか?
これは私が考えたものです。就活後半に内定をもらい始めた頃から言っていました。もしこのように言わなければ、他にどんな言い方があるでしょうか?他のどんなことを言っても意味がないと思います。私は大企業についてはあまり知りません。というのも、大企業は就職後半には募集をしていなかったからです。後半は基本的に小規模の、将来性のある企業を受けていました。
Kingsoftに入社―在日中国系企業の募集状況
当時のKingsoftの募集形態は日本式でしたか?全部で何回面接がありましたか?
完全に日本式でした。面接は2回しかなく、面接の間隔も離れていて選考スピードは比較的ゆっくりしていました。説明会と交流会のあと約一週間後に一次面接があり、その一週間後にSPIテスト、その二週間後に最終面接でした。
先輩はどのようなルートでKingsoftの説明会を知ったのですか?また単独説明会でしたか?
リクナビで知りました。説明会はKingsoftの単独説明会でした。
会社の同期は全部で何人ですか。また、国籍や文理系の比率はどうですか。
全部で10人です。日本人が8人、中国人が2人です。技術職は4人で、総合職が6人なので、技術職のほうが少ないですね。
先輩の現在の職種は何ですか?また、もともと志望していたのはどの部門ですか?
入社したばかりで研修中なので、まだ部門に分かれていません。私の希望は、技術職以外であれば何でもやります。当時は技術職と総合職に分けて募集していたので、私は総合職に応募しました。
IT企業の総合職は、一般的に何をするのですか?
仕事は沢山あります。まず、IT技術の特殊性を除けばKingsoftも普通の企業でしょう。会社には人事や財務や総務部など一通りの部門があります。また、サービス部門、営業、商品部門があります。商品部門は技術部を含んでいて、運営やマーケティング、消費者サービスを行っています。商品部門の一部の技術面を除けば、他は全て総合職がやっています。
では長期的に見て、先輩はこの会社で長く勤め、日本の年功序列の制度に従っていくつもりですか?
私の会社は全くそのような考えは持っていません。中国本社としては、Kingsoftが社員に与えられないものは、社員があるレベルに達すれば別の会社がもたらしてくれるだろう、と考えています。私が内定者の交流会に参加したとき、就活をここで辞めるかまだ決めていませんでした。当時の社長はこう話していました。「わが社は中国IT界の要人を輩出してきた名門であり、あなたたちはここで学び終わったら、何をしてもかまいません。私たちの会社の多くの人が自分たちで起業していきました。」
それでは、Kingsoftは長い時間をかけて育成した多くの社員が、社外に出ていくのを心配していないのですか?
そのことは心配していません。なぜなら会社には優れた技術がありますし、多くの時間を費やして私たちを育成する必要もありません。日本企業だけが社員一人を育成するのに多くの時間が必要だと考えていますが、他の地域ではそうではありません。なぜでしょうか?それは構造が全く異なっているからです。中国では、多くの人が三年間勤めたら転職しますが、それは転職すれば給料が2倍になるからです。またもう三年間勤めて転職すると、給料はまた2倍になるでしょう。転職にはこのようなメリットがあるのです。しかし、もし日本で三年働いた後転職すると、なぜ転職したのか、何か問題があったのかと聞かれるでしょう。給料も少し減り、そこから少しずつ上げていくしかありません。日本と中国は全く異なっています。ですから、中国では社員がひとり辞めたところで問題はなく、別の会社から転職してくる人がいるでしょう。これは流動的なプロセスです。実際には、人材は流失してしまうのではなく、大きなサイクルの中で循環しているのです。
Kingsoftのような体制は、日本の環境とは相容れないのではないでしょうか?
中国人は皆ずっと日本に居たいと思っているとは限りません。他の場所に行ってしまうかもしれませんね。
では、こう言うことはできますか。中国国内の人材のフローは、AからB、BからC、CからAというように、人材は会社間でフローしています。それに対してKingsoft Japanでは、ある社員が転職していくと新たな中国人社員が入社するため、ある意味人材は国家間でフローしている感じなのでしょうか?
違います。日本人は中途採用も可能ですが、中国人は新卒を採用しています。新卒採用はまだ3回だけで、私の代の前に2回しかありません。それ以前は中途採用の形式でしか募集しておらず、入ってくるのは能力のある人たちでした。現在は会社も大きくなり、新人育成も始めました。日本人も採用しているため、今後はKingsoftも変わっていくでしょう。というのも日本人は安定した職場環境を求めていますから。安定志向の人は会社にとどまり、そうでない人は転職して良いのです。日本企業ではこのような選択はできません。
日中就職対比―日本で働く上でのメリット・デメリット
現在の研修期間に日本人の新入社員と交流して、互いの共通点と相違点は感じますか?就職はお見合いのようなもので、縁があった人が一緒になれるとよく聞きます。縁あって同じ会社に入ったみなさんには、どんな点が共通しているのでしょうか?
会社の雰囲気として、社員は比較的自分の考えで仕事ができます。マイペースではなく、自分のやりたいことを会社が支援してくれます。例えば、私の2つ上の先輩はアプリを作りたいと申し出て、3か月の時間をもらっていました。
では企画書を提出して、自分がやりたいことを申し出ればよいのですね?
そうです。皆この制度を利用したいと思っています。また、私の会社は休暇を取るのが比較的簡単です。社員に対して会社に長時間いることを強制しませんし、残業の必要もありません。自分の仕事をきちんとやることは前提ですが、やりたいことはしてよい環境です。
中国人社員と日本人社員の異なる部分はどこですか。
日本人社員は安定志向と残業の習慣があります。習慣として残業し、習慣として物事を完了させません。しかし、これに対して効率が悪いと彼らは思っていないようです。明日のことを今日片づけ、明日には明後日のことすることはできますが、実際にこのようにはしません。日本人は仕事を後回しにすることが多いと思います。
Kingsoftは中国系企業ですから、残業の習慣のない中国人にとって全く問題ありませんね。しかし、残業の習慣のない中国人が日本企業に入ったら、奇妙だと思われるのでしょうか?
実際にはそのようなことはないと思います。あなたは外国人ですから、入社して感じることも違うでしょう。日本人なら、皆と一緒に残業しなければ奇妙に思われるかもしれません。しかしあなたは中国人なので、他の人とは違うのだと周りもわかってくれます。私は以前、株式会社SHIFTというもう少し大きいIT企業でアルバイトをしていました。そこでは外国人社員は先に帰っていましたが、誰も何も言っていませんでした。
しかし、それではグループの中での衝突を生みませんか?
当然、これらのことは自分の仕事が終わっていることが前提です。しかし多くの職種、例えばそれぞれの顧客が決まっている業務では、あなたの顧客のための仕事は他の社員に影響を及ぼしません。自分の仕事が終わっているか、いないかは他の人と関係ありませんから、早めに帰るのはむしろ他の人にとっては邪魔がいなくなって良いかもしれません。日本人については、彼らは自主的に残っているのです。そのため外国人は先に帰ってしまいます。
皆が日本で箔をつけようと大学院に進む中で、先輩は日本での就職を選びました。日本でキャリアを築いていく上でどんなメリット、または面白い部分がありますか。
利点はやっぱり、ルールが整っていて、社会の基礎がしっかりしていることです。暗黙のルールといったものがないので、煩雑なことを考慮する必要がなく、集中したいことに集中できます。個人的な仕事においてもそうであるように、投資やビザ、起業においてもまた同じです。日本の環境は成熟しており、競争も比較的公平です。
反対に、不満な点はありますか。
日本は公平で、公平すぎるくらいです。中国ではチャンスが多いですが、日本は成熟しすぎたためチャンスが少ない国です。中国にはどんな機会もあり、どんな不思議なことも起こり得ます。チャンスがあるため様々な方法でお金も稼ぐことができます。もちろん損をすることもあるでしょう。結論を言うと、日本は大きな国有企業の株のようで、ローリスクですがローリターンです。でも毎日とても楽しいですよ。
日本のIT業界の現状―「入れない、出ていけない」
先輩は日本のIT市場は発展しきったと思いますか?
ITは永遠に発展しきることはないでしょう。新しいものが出てきたら、新たな市場が出現しますから。
では日本の開発力は十分でしょうか?
足りないですね。技術面、設計面、理念の上でも足りていません。日本のIT業界だけにガラケーという言葉があるのも、業界の現状が原因です。日本企業には外部から人が入れず、また日本企業は外部に出ていけないのです。
これは国民性と関連があると思いますが、この問題は改善できると思いますか?日本は世界のIT業界の平均レベルに追い付けるでしょうか?
今の中国IT業界は日本の市場を観察していて、押し寄せるタイミングを待っている状況です。今のところはそこまで入ってきてはいませんが。
もし押し寄せてきたら、どうなると予想していますか?
押し寄せてきたときに、日本人が団結して不買運動を起こさなかったら、日本のITは終わりでしょう。終わりだと言わなくても、外国に対して日本は規則を設けて、外国企業はそれを厳しく遵守することになるでしょう。現在の日本の多くの商品にあまり競争力はありません。例えば、私は以前にインターンをしていた時にある日本の大手IT企業が開発したシステムを使いましたが、簡単なものでした・・・
しかし、私は最近日本のIT業界の研究をして知ったのですが、日本のIT業界の生産額は日本全体の10%を占めており、これは最も大きな規模です。なぜこんなに巨大な産業にこんなに多くの問題があるのでしょう?さきほど先輩は、問題は国民性にあるとおっしゃいましたが、具体的にはどの特徴が、日本のIT業界全体の「無用の長物化」につながったのでしょうか?
「無用の長物」ではありません。日本人にとっては使いやすく、彼らの習慣に合っているのでしょう。日本人はデザインを気にしないので、多少格好悪くても使います。しかし、これでは国際的には全くうまくいかないのです。
つまり根本的なニーズに問題があるのですか?
そうです。日本のニーズと世界のニーズは違います。俯瞰してみてみると、日本で流行しているものと同じものは世界で見つけられません。例えば、NAVERまとめ、2チャンネル、ヤフーなどです。以前の中国版ヤフーや国際版ヤフーは、日本のヤフーとは全く異なります。楽天とタオバオも全く違います。
Kingsoft in Japan―無限の潜在能力
先ほど先輩は、日本企業には外部から人が入れず、また日本企業も外に出ていけないとおっしゃっていましたね。出ていけないのは企業の競争力が弱く、入れないというのは日本の市場が小さいからですが、これは絶望的だと思います。先輩はあえて日本のIT企業を選びましたが、それは自身を鍛錬するためですか?
実は私自身もはっきりしていなくて、自分が何をしたいのかわかりません。ですが、中国の三高(高身長・金持ち・イケメン)の人や金持ちの子女と競争しなくて済むここの環境は良いと思っています。また、自分の能力を発揮できる会社を見つけることができ、満足しています。
しかし先輩は珍しいケースだと思います。先輩は、この産業の日本での将来は明るくないと知っていながら、ここで働くことを選択しています。その理由は、日本が比較的公平な社会だからですよね?
将来は明るくないとは限りません。他社は日本進出していませんが、Kingsoftは進出していますよね。
Kingsoftの日本進出の目的はなんですか。
それは私もわかりません。日本で試験販売をしようと考えたのかもしれませんね。というのも、Kingsoftは国際版も持っており、アメリカや他地域での販売額は悪くありません。そこで、日本にも進出しようと考えたのだと思います。日本法人は、日本人が会社設立のプランを考え、現社長が買収してできました。
Kingsoftは日本市場でしか活動していないのですか?取引先は日本企業だけでしょうか?
そうです。
これは私たちの予想ですが、多くの企業が進出できない日本のIT業界において、進出を果たしたKingsoftは業界内で優勢なのではないでしょうか?
優勢と言って良いと思います。しかし問題は、一番の競争相手は日本企業ではなくMicrosoftであることです。しかし、Kingsoftの市場シェアはMicrosoftに遠く及ばないものの、業界2位を誇っています。
Kingsoftの有力商品はオフィスソフトウェアですか?
そうでしょう。他のソフトはオフィスソフトウェアほど儲かりません。Kingsoftの最大の収入源はオフィスソフトです。
Kingsoftの価格がMicrosoftよりも安ければ、この販売シェアの差は補完できるのではないですか?まだまだ発展の余地はありますよね。
しかし、現在の成長市場はスマートフォンなどの携帯電話のほうに移っています。
Kingsoftはアプリを作っていますか。
私たちもアプリを作っています。というのもKingsoftはPC市場において優勢ではなくなってきているからです。GoogleがGoogle docsを出し、MicrosoftもOne Driveを開発しました。どちらも日本語で文書や図表を作成でき、文字処理システムに匹敵します。またGoogleは無料ですし、Microsoftも少しずつ無料にしてきています。GoogleがAndroidで出しているシステムも無料です。
なにかスマートフォンのアプリで例を挙げていただけませんか?
Android携帯の整理アプリで、Clean masterというものがあります。中国では猎豹清理大师と呼ばれており、Google Play市場でランキング第一位のツールソフトウェアです。Kingsoftのアプリは基本的にAndroid向けに作られています。
仕事後の思考と印象―目標を決め、「余裕」を利用する。学問に終わりはない
先輩は日本での就職において最も重要なのは日本語能力だとおっしゃっていました。では実際に働いてみて、仕事の上で最も必要なのは何だと思いましたか。
態度です。仕事をしなければいけない時に仕事ができるということです。
それは当たり前のことのように思えますが。
その通りです。当たり前のことができれば良いのです。また、自分がやりたいことがあれば、機会があったら躊躇することなく取り組むことです。これは会社とは関係なく、私個人の意見です。あなたものちにわかりますが、入社後にも意外と余裕があるものです。肝心なのはその余裕を利用できるかどうかです。日本人は往々にしてそれを残業に費やします。
このような考えをお持ちということは、先輩はもう実践されているということですよね。余裕を見つけて、どんなことをしているのですか?
私の場合は、今は文章を書いています。
私はよく先輩が知乎で書いているものを拝見しています。とても勉強になっているのですが、先輩の記事とITとはなんの関係もないように思えるのですが?
確かに関係はありません。しかし自分の趣味と仕事は必ずしも関連している必要はありませんよね。
趣味が今後のキャリアプランに影響する可能性はありますか?文章関係の仕事に携わることを考えたことはありませんか?
ありません。趣味を仕事にすべきでありませんし、また仕事を趣味にすべきでもありません。私は今月忙しかったのですが、それは原稿の執筆をひとつ抱えていたからです。この原稿は無償ではなく、仕事としてやっていました。だからとても忙しかったのです。
先輩が会社で最もしたいことはなんですか。
自分で商品を開発することです。私は総合職ですが、技術も体得できたら良いですね。以前に他の人と共同でアプリを開発した際、私は企画と設計を担当しました。設計まではできたのですが、プロセスを書くことはできませんでした。この時に大きな問題に直面しました。メンバーが作ったものと、私の想像していたものが同じではなかったのです。メンバーから「あなたは技術を理解していない。あなたの理想のものは作れない」、または「技術面からみて、このようにしたほうが良い。」と言われたら反論できません。最終的に出来上がるのは100%私の理想のものではなく、たぶん理想の50%にも届かないものでしょう。そのため、私は100%全てを自分で作り上げたいと思っています。
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